つくる
「穂海のお米」ができるまで
ここ上越では種まきから収穫まで品種にもよりますが、およそ6~7カ月かかります。そのため1年に1回しか収穫できません。1~3月の田んぼはほぼ雪に覆われています。夏は30度を超える日が何日も続くこともあります。田んぼの後ろには妙高を始めとする山々が広がり、川の流れのような用水が田んぼの横を流れています。
穂海は上越市板倉区内に約350枚(田んぼは一つの区画ごとに1枚2枚と数えます)の田んぼで水稲を作っています。面積にして約60ヘクタール、東京ドーム約10個分以上になります。(平成26年5月現在)
いよいよ忙しい季節の始まりです。まずは苗をつくるところからはじまります。苗は30cm×60cmの苗箱に種もみをまいてそこで育てます。
① 60℃のお湯に10分間つけ消毒します。その後すぐに冷やします。冷やさないと種がゆだってしまい発芽しなくなってしまいます。消毒後、約12℃~13℃くらいの水に10日ほどつけ、充分に水をふくませて発芽を促します。
② そして30℃程に加温し、種がうっすらと芽をだしたような状態にします。
③ 播種機(はしゅき)という機械を使って、苗箱に土を敷いて、種をまいて、また上に土をかぶせます。
播種がおわった苗箱は、育苗器とよばれる真っ暗で大きな機械の中に入れられ出芽を待ちます。育苗器の中は暗いだけでなく温度約28℃程湿度100%になっていて、出芽できるような環境にしています。 芽が出たら浅いプールを作った苗代田(苗専用の田んぼ)に移し、さらに苗の成長を促します。
並べただけでは、寒すぎるので、上に保温のためのシートをかぶせます。
成長具合を確認しながらシートで保護するなど温度調整を続けます。
育苗とは別に、田んぼを耕す部隊も活動開始です。
まずあぜ塗りをします。あぜ塗りは、あぜ塗り機とよばれる専用の機械をトラクターにつけてあぜに土を塗り固めていきます。あぜから水が漏れにくくするために行います。
あぜから水がたくさんもれてしまうと生育状態の管理が難しくなり、また、農薬の効きも悪くなってしまいます。
次に肥料を散布します。穂海では土づくりや環境への配慮から、化学肥料だけでなく有機質の肥料も使用しています。これらはブロードキャスターとよばれる専用の機械をトラクターにつけて散布します。
肥料散布がおわったら、トラクターに耕うんするためのロータリーという機械を取り付け、土を耕していきます。
実は秋にも耕うん作業をしており、これは稲わらを腐りやすくするために行っています。
■ 肥料とは?
肥料とは農作物が育つために必要な栄養分(窒素、リン、カリ、微量元素等)のうち、土壌中に足りない分を補うものです。必要な栄養分はその土地の状況(土質…粘土質、砂質など、エリアの状態…山際、扇状地、砂浜、火山の近くなど)とそのときの天候状況(気温、降雨量等)によっても全く異なります。夏が暑ければ窒素分が足りなくなるので、肥料を追加する様々な工夫をしています。また前年度に米以外のものを作ったり、肥料の種類を変えた等これまでの状況にも影響されるので、他の生産者の方の栽培方法は参考にはなりますが、再現されるとは限りません。土地の状況も天候も毎年変わるので、マニュアル化はなかなか難しいのです。
また堆肥に代表される有機質肥料はその効果がじわじわ出るため、効果が出る時期を考えて使用します。化学肥料は即効性が高いため、養分が必要な時期に適切な量を使用します。
代掻きは耕うん作業が終わった田んぼに水を張り、均一になるようにならしていく作業です。平らに均一にならせないと、水を張っても深さが均一でなく、田植えすると根っこの張り方が深いものと浅いものができ、成長にムラが出来てしまいます。
また、田んぼの底にある割れ目などをしっかり埋めて水をもれにくくする役割もあります。地味ですが、とても大切な作業です。
いよいよ田植えです。播種してから30日程度で立派な苗に成長します。その苗を田植え機で植えていきます。穂海では5月上旬~6月上旬までほぼ一ヶ月にわたり田植えを行います。極早生から極晩生まで様々な品種を組み合わせて秋の稲刈りが集中しないように工夫しています。
田植え機は人の手の動きを再現しており、また人の数十倍の速さで植え付けていきます。日本の技術の素晴らしさを感じる機械のひとつです。
この時期は稲の成長を見ながら田んぼに張っている水の量を毎日見て回ります。また田植えの後、投げ込み剤という種類の除草剤をあぜから投げ入れます。この除草剤は田んぼの中に入ると外袋が溶けて、中の農薬が溶け出して草が生えるのを防ぐ仕組みになっています。
またあぜの草刈りも重要な仕事です。草が大きくなると、風が通り抜けにくくなり、病気にもかかりやすくなります。不要な農薬を散布しないためにも必要な作業です。
またこの時期には、穂肥(ほごえ)とよばれる追肥の作業を行います。これは稲が体の中に稲穂を作り出すときにたくさんの養分を必要とするので、それに合わせて肥料を投入します。
■ 農薬とは?
農薬とはそもそも病害虫や雑草から農作物を守るためのものです。
最近の化学農薬は、研究開発が進み、有効成分の濃度が薄いものや農産物や土壌中に分解されずに残る成分を使わないなど毒性が低くなりました。また、製剤技術の進化により散布者が吸い込むことが少ない剤型のものなどもあります。
化学農薬を使わない病害虫防除として、病害虫に強い品種を採用することやあぜの草刈を何度も行うこと、シートや敷きわらで雑草を抑えたり、クモ等の天敵を利用するなど行われています。
穂海ではきちんと防除計画を立て、状況に応じて見直しながら、必要最低限の農薬を決められた使い方に従って散布しています。毎年残留農薬検査も実施しており、農産物に残留していないことも確認しています。
中干しは田んぼの水を抜き田面を乾かして、ストレスを与える作業です。根がしっかり張れば、収穫時期に稲穂で頭が重くなった稲をしっかり支えることができます。またこの作業は稲の体内に稲穂をつくらせるように促すものでもあります。水を抜いたあと、足跡が残るくらいの硬さまで干します。
江たて(溝切り)は田んぼの稲と稲の間に溝を切って、排水溝までつなげ、水を切りやすくする作業です。中干しを効率よく行うためにやっています。
中干し後はずっと水を張っておくわけではありません。水を張り、それがなくなったらまた水をはる、という事を繰り返します。
8月末頃には、田んぼから水を完全に抜いてしまいます。
そうしないと秋の田んぼが柔らかくなりコンバイン(刈り取り機)が入れなくなってしまうのと共に、稲穂が登熟しにくくなってしまうためです。
いよいよ出穂(「しゅっすい」とよみます)です。稲の花が咲いてきました。稲の花は2時間ほどしか咲きません。秋の収穫へ向けカウントダウンです。
いよいよ収穫の季節です。黄金色に、たわわに実った一面の稲穂の海。穂海の社名の由来となった風景です。
稲刈りはコンバインで行います。コンバインは田んぼの中の高級車です。大きな機械になると国産の高級車一台分くらいの価格になります。稲を刈り取り、稲穂からモミだけをとり、稲わらを20cmほどに切って田んぼに戻すという作業をしています。コンバインのタンクにたまったモミがいっぱいになると、ダンプにはきだします。そしてダンプの荷台もいっぱいになると乾燥機まで運び、乾燥調整の工程に進みます。
刈り取ったモミはまだ生き物です。そのままではモミ同士の発熱によって高温状態となり、お米が傷んでしまいます。その前に乾燥機を使って、水分が15%くらいになるまで乾燥させます。乾燥する前は状態にもよりますが20-25%程度です。これを40℃ほどの熱風のなかを循環させ一晩かけてゆっくり水分を飛ばしていきます。
この先は機械の流れ作業です。乾燥したモミを粗選機で余計なものを取り除きます。次にモミ摺り機にかけ、モミの殻を外し、中の玄米だけ集めます。さらに石抜き機で入ってしまった石などの異物を除去し、決まった大きさの網でお米を選別します。そして、色彩選別機で黒く変色したお米や籾などを取り除きます。
最後に計量器で測って、米袋に入れて、玄米が出来上がりです。
そして食べる前には精米され、みなさまの毎日食べるごはんになります。こうやって通してみるとまさに「命」を頂いているんだなという感じがしませんか?